
留学生時代から、Naomi’s Café の大フアンという森本さんは、なおみさん
からの信望も厚い。なおみさんによれば「普段は寡黙な夫(ジョージ氏)の
大のお気に入りでよくおしゃべりをしていた」のだそう。1991年~2014年
カナダ在住。在住時は、移民専門のカナダ人の弁護士事務所と教師として勤務。
“ハズレなし”のNaomi’s Café
初めて私がNaomi’s Café を訪れたのは、『いいカフェがあるのよ』と、
いつも言っていた友人に連れられてでした。それ以来同じ関西の出身の
なおみさんの気質に惚れ込み通うようになりました。以来、学生だった
私はNaomi’s Café の「週一は通うヘビー・ユーザー」となりました(笑)。
私たち学生は、なおみさんのご厚意でご馳走して頂いておりました。
他のお客さんの邪魔にならないように、入り口のそばのカウンター席
に座るのがお決まりでした。なおみさんと話しやすかったですし、ハ
ンバーガーやハッシュブラウンを焼くのが見えるんです。ランチタイム
はすごい忙しさだったので、できるだけ避けて行くようにしていました。
奥のカウンターには、お客さんが自分で取っていくように何種類かの
パイやパン、クッキージャーなどが置いてあって。「全部手づくり」と
いうお店は、珍しかったと思います。
友人と一緒に(右端が森本さん)
私が好きだったメニューは、日替わりスペシャルのレバー・ステーキの
上にソースをかけたもの。それにスープ。クラムチャウダー、オニオン
スープ、チキンヌードルスープ、トマトスープ…全部美味しい!土曜日の
ブランチ(ハッシュブラウンと卵、ソーセージ、ベーコン、それになお
みさんのパン)も美味しかった!なおみさんの長年の経験なのでしょう、
いつ行っても、何を食べても“ハズレなし”なんです。日本から遊びに来た
親戚の子をNaomi’s Café に連れて行ったら、「こんなおいしいカフェに
いつも来られるなんて!」と羨ましがられました。
なおみさんは、レシピも惜しまずにすぐに教えてくれるんです。カナダ人
の友人になおみさんの「失敗しないシュークリーム」のレシピをあげたら、
「初めて焼けた!」とびっくりしていましたよ。
ジョークの応酬
なおみさんは懐の大きい人で、誰でも受け止めてくれるんです。なおみさ
んとのおしゃべりが楽しかったのも、カフェ に通った大きな理由でした。
「今日ね、こんなお客さんが来たのよ」とか「ねえ、聞いてよ~!私4時間
しか寝てないのよ~」とか。“ゆっくりしていいんだな”という雰囲気で、
まったり過ごす時間が本当に楽しかった。なおみさんのお人柄で、「また
来たい!」という気持ちになるのだと思います。
なおみさんはいつもニコニコ楽しくしていて、常連さんもみんなジョークが
好きな同じような雰囲気の人たちが集まっていました。隣りの床屋のNormanは、
電気が切れると電球を替えに来たりしていました。看板屋のBillは「ちょっと
おいで」なんて言って、いろいろなジョークを教えてくれるんです。裁判官や
バンク(銀行)の人たちも来ていたし、窓越しに挨拶していく人も多かったで
すよ。
常連さんたちとなおみさんの言葉のキャッチボールが、ものすごくおもしろかっ
た!ジョークの応酬です。ジェニーとのやり取りも、おもしろかったですよ。
ジェニーはちょっと障害があり、物の言い方がキツイところもあったのですが、
常連さんたちはそれをよくわかっていて、楽しんでいましたね。
カフェでは、ほとんどなおみさんが注文を聞いて、ひとりで全部料理を作ってい
たんです。よくできるな~と、いつも思っていました。月曜日から土曜日まで週6
日も働いて、朝も4時から準備して、パンも全部焼いて。すごいです。
日本食の山盛り
カフェの奥には、カフェで出す食べ物とは別に日本人学生のためのテーブル
があり、ちらし寿司、お煮しめ、チャーメン、お赤飯などが大皿にぼんぼんと
盛ってあって。それぞれ自分で欲しいだけたっぷりと食べて、「ご馳走様~!」
と帰っていくんです。学生が入れ替わり立ち替わり来ていました。
なおみさんのご好意のみで、学生たちにたくさんの食べ物を“全部無料!”で
食べさせてくださっていました。中にはちゃっかりとそれに甘えているだけ
の子もいました。なおみさんは何も言いませんでしたけれど、そういう人に
は、我慢できずに、私が注意させてもらったことが何度かあります(笑)。
なおみさんが「松茸ご飯を作って待っているから取りに来てね」と言われて
いたのに、誰も取りに行く人がなく一週間ほどたちました。なおみさんは気
にせずに「ダメになったから捨てちゃったわ」と言っていましたが、それは
なおみさんのご好意に対してとっても失礼なこと。どうなることかと心配し
ていたら、また炊いてくださって「取りにいらっしゃい!」と。なんと心の
広い人なんでしょう。大、大、大反省です!
私たちがNaomi’s Café に入り浸っていると聞いた教会の先生に、「お前も
行ってるんか?皆してなおみさんの店をつぶす気か~⁈」と叱られましたよ(笑)。
カフェをピカピカにしていたジョージさん
なおみさんのご主人・ジョージさんのことを私はおじさんと呼んでいました。
おじさんは、毎日自分の仕事が終わってから、カフェの閉店時間あたりに
お店に来て手伝っていました。“昔かたぎ‘とでも言うのでしょうか。あいさつ
はするけれど、物静かな感じで、黙々と片付けたり荷物を車に運んだり。
その間なおみさんはキッチンでずっと、翌日の仕込みなどをしていたんです。
なおみさんとは「大恋愛をした」と、おじさんが教えてくれました(笑)。
掃除をしながら、「“お好み焼きを食べに行こう”と言って、釣ったんだよ~」
なんて話してくれていると、キッチンからなおみさんが「ダデイー!ダメ!」
なんて怒ってました。おじさんは、いつでも這いつくばるようにして、もの
すごく丁寧にカフェをピカピカに掃除してくれていましたよ。
理不尽なことには毅然と
なおみさんは、関西人のおばちゃんだけれど、江戸っ子みたいに気っぷがいい。
ふんわりしているけれど、曲がったことは大嫌い。それにまったく裏表のない
人です。気に入ったらお金はとらないけれど、気に入らないとお客さんでも
断ってしまう。お客さんなのに大丈夫?と思うくらいに、です。
ある時ハンバーガーを買いに来た人が、「半生ではダメ、ちゃんと焼かないと」
と言うのに、焼けてなくても良いから早くくれと言ったんです。なおみさんは
ものすごく怒って、「そんな客はいらん!お金は返すから帰れ!」と怒鳴って。
ハラハラしながら見ていましたが、結局その人は、ちゃんと焼けるまで待って
買っていきました。
なおみさんは、横柄な人とか人を見下げるような人が大嫌いでした。理不尽な
人に対しては、相手が白人だろうと誰だろうとお構いなしに、「私の店に来る
な!」と追い返してました。
お客様でも誰でも、バシッと何でも言うのが気持ち良かったです。カフェに集
まってくるお客さんも、なおみさんと同じような心の持ち主が多かったと思い
ます。
ポジテイブに励ましてくれるなおみさん
「とにかく頑張りなさい!何でもやろうと思えばできるから!」と、いつも
励ましてくれました。移民申請も、なおみさんが背中を押してくれたんです。
運転免許、Income Tax Return(源泉徴収)、Social Insurance Number
(注:日本の“マイナンバー”にあたる)の取得なども、みんなでカフェで頭を
つき合わせて、情報交換をしながらやりました。なおみさんのポジテイブな
生き方。常に前向きで、何かをやろうと思ったらすぐに動く。そういう姿に
いつも励まされました。
仕事を始めてからはカフェに行けなくなりましたが、時々料理を届けてくだ
さったり、お正月やクリスマスには自宅に呼んでいただきました。私が日本
に帰国してからは、なおみさんが日本に来られるといつも会いに行きます。
ビスコッチをおみやげに持ってきてくれるんです。かれこれ30年来のお付き
合いになりますね。
Naomi's Cafe で楽しい時間を過ごせて良かった!いろいろな人たちに
会うことができて良かった!と、今も心から思っています。
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