Don & Linda Eliot

ドンさんはNaomi’s Caféの近所の写真スタジオのオーナー。カフェを様々な形
で支えてきた常連客のひとりである。リンダさんは学校の教員。
ドンさんが撮影
したカフェ閉店時の集合写真は、すべての人の思い出に刻まれる大切な1枚となっ
ている。

ナオミがいるから、そこは特別な場所だった
カフェ3 (1)

Don:僕が写真スタジオを始めた時には、向かい側にもう一つカフェがあった。
ナオミのカフェは、外から見ると薄暗くてちょっと怖かったんだよね。はじめは
向かい側のカフェに行っていたんだけれど、勇気を出してナオミのカフェに行っ
てみたら、ナオミが親切でとっても満足して、「ここが僕のいるべき場所なんだ」
と感じたよ。見た目は古くて良くなかったけれど、ナオミがいるからそこは特別
な場所だったんだ。

 

Linda:あなた、1日に2~3回Naomi’s Cafeに行っていたものね。
 

D: 僕は角を曲がったところで写真スタジオをやっていて、毎朝、仕事をはじめ
る前にコーヒーとレーズントーストを食べに行ったよ。一緒に働いていた女の子
とランチを食べに行き、午後にはコーヒーブレイクにと、しょっちゅうね。僕だ
けじゃなくて、近所のコミュニテイーの人たちがみんなそうしていたよ。

オミは子どもが大好きでね。誰かの子どもが来ると、何をやっていても手を止め

子どものところに来てくれた。
息子のショーン(現在、36歳)がベビーだった頃、
僕がカウンター席に座ってシ
ョーンを膝にのせていると、ナオミがさっと来て、
カウンターの周りのものを子
どもの手の届かないところにパッとどけてくれたよ。
僕がコーヒーとレーズント
ストを楽しんでいる間、ショーンの安全に気を配って
いてくれていた。


日本人はお辞儀をする習慣があるよね!? 娘が小さかった頃、僕たちが店を出る

にナオミがちょっとお辞儀をしてくれたんだけれど、娘がもうちょっと深くお辞

をして、そうするとナオミがもっと深くお辞儀をして。娘が負けずにもっと深く

辞儀して。。。それがちょっとしたゲームみたいでね。そうやってお辞儀をし合って
ているうちに娘が床におでこがつくくらいにお辞儀をして。それを見てナオミが
笑いしてね。楽しかったよ。もちろん、いつでもうちの娘が勝っていたけどね。
 

L:ナオミはユーモアのセンスがあったわよね。
 

D:いつも笑い話になるようなことが起きていたよね。
 

カフェの中はいつもにぎやか
ドン・エリオットと娘のタナ (1)ドンさんと娘のターナー

L:新しく来た人が店に入ってきても、ナオミはいつも常連さんのために予約席を
とっておいてくれたのよ。
 

D:僕はよくブース4を使っていたよ。ブース席は四人掛けくらいで、(人数が増え
ると)ブースの横に椅子を置いてくれたこともあったね。 
 

L:ブース5は、にぎやかなテーブルだったわよね。
 

D:ブース5は、ワイルドだったよ(笑)。看板屋のビル親子(父親のBill とBill Jr.)
ホビーショップのロジャーとアン。いつだったか、誰かが塩とコショウの瓶をテーブ
ルに接着剤でつけちゃったんだよ。ナオミはカンカンに怒っていたな。
近くに
Court House(裁判所)があって、裁判官が常連客だった。常連の裁判官だけ
でなく、
裁判に関わっている弁護士や陪審員、傍聴人なんかも来ていたよね。時々、
ひとつの
裁判中の裁判官と被告人が背中合わせに座っていたりしてね。ナオミは笑っ
いたよ。

 

ナオミのキッチンを訪ねるように。。。
 

D:僕がカフェに行き初めた頃には、ジョージはまだ働いていたので土曜日だけ来て
いたけれど、定年後は毎日カフェに来るようになったよね。コーヒーのおかわりを
入れてくれたり、お皿を下げてくれたり、あんまりたくさんのことはしなかったけど
ね(笑)。
今、思い出してみると、カフェに行っていたのではなくて彼女の家にみん
なが集まっ
ているという感じだったね。近所で働いている人がみんな集まってきてい
た。
ナオミのキッチンにいたように感じたのは、ジョージがいたからだよね。彼は、
カフェの良い雰囲気を作るのに大切な人だった。そこにいることに大きな意味が
った。


ドアを開けた瞬間にトーストが出来上がる

 レーズンブレッド (1)

D:大好物はレーズントースト!レーズンもシナモンもたっぷりで最高だったね。
僕のスタジオは曲がり角を曲がったところにあったんだけれど、僕がスタジオを出
てカフェに向かっている時、カフェの向かい側のビルのオフィスのガラスに映って
いる僕の姿を見て、ナオミはトースターにパンを入れてくれた。だから、ドアを開
けてお店に入ったちょうどその時に、トーストがポンと出来上がるようになってい
たんだ。いつも完璧なタイミングだったよ(笑)。
それにポテトコロッケ!マッシュ
ポテトとビーフを丸めて、パン粉をつけて揚げたもの。あれはものすごくおいしかっ
た!
パイもおいしかった!ナオミのアップルパイは最高だよ。どこで食べるものより
いしかった。それから、ピースープ(豆のスープ)にシナモンバン!通っている
間に肥っちゃった
よ(笑)。
 

L:私は仕事をしていたので、いつもはあまり行かれなかったのだけれど、ドンが
いろいろと家に持って帰ってきてくれて。土曜日の朝とかには家族で行ったわ。
子どもたちは、よくシナモンバンを食べていたわね。サンドイッチも、ホームメード
のパンが本当においしかった!ナオミのベーキングはみんな大好きよ。とにかく
ものすごくおいしいの。
 

個性豊かな従業員

ジェニー2人気者だったジェニー

D:従業員も個性的だったよ。発達障害のある子もいたね。だから常連客は、そう
いう子だと理解して接していたんだ。ジェニーという女の子がいてね、その子は
とても物をはっきりという子で。たとえば、新しいお客さんが入ってきて席に座ろう
とすると「Can’t sit there! Reserved! 」(座っちゃダメ!予約席だよ!)。予約の
サインもないんだけれどね。(注:カフェのほとんどの席は、常連客の予約席のよう
になっていた。)初めて来た人は、そりゃあビックリしただろうね。


同じ名前の常連客が二人いて、ひとりは“Good Person”で、もうひとりは
“Bad Person”。別い悪い人というわけじゃなかったけれど、ジェニーが好きじゃない
方の人が来ると「Bad one is coming!」(悪いのが来るよ!)、好きな方の人が来る 
と「The good one came in!」(良いのが来たよ!)と大声でナオミに伝えるんだ。
お店の中にいる常連でないお客は、「えっ!?」という感じで回りをキョロキョロ見回
していたよね(笑)。
 

みんなで守ってきたNaomi’s Cafe


D :ちょっと変なお客が来ると、僕はその客が出ていくまでカフェにずっといたんだ。
自然に「ここは守るべき場所だ」と感じていたんだよね。女性ひとりでレストランに
いるというのは心配だから、家族の一員として気遣うのは当たり前のことだったよ。
ナオミが気づいていたかどうかわからないけど、そういう時はいつもより長くカフェ
にいたんだ。

L:彼女は鋭いから、きっと気づいていたわよ。

D;カフェのトイレは建物から外に突き出している感じになっていたんだ。常連客は、
誰も使わなかったよ。建物が古くて、いつか落ちるんじゃないかと思っていたからね。
建物全体がどんどん傾いていっていたから、入り口のドアがつっかえて閉まらなくなる
んだ。隣りの床屋のノーム(Norman)と僕とで、ドアを外して下を削って閉まるよう
にしていたんだ。ずっとそうやっていたよね。最終的には、2インチの差があった。
それだけ建物が傾いていたということなんだよ。


失礼なお客は、お断り

D:ナオミはけっこう厳しいところがあったよ。あんまり好きじゃないタイプの客が
カウンターに座ると、ここまでサービスが遅くなるんだ!と思うほど、コーヒーを
出すまでにすごい時間をかけたりしてね。「ここはひどい店だ!」とその客が怒って
出ていくと、「良し!」と思っていたんだろうね。(笑) 常連たちは、それを見て
いて「ああ、ナオミがまたやってるよ」という感じだったよね。あまり治安のよい場
所ではなかったから変わった人も来たりしたけど、ナオミは必要な人には食べ物を
無料でふるまっていた。ホームレスの人が来ても、その人が礼儀正しい良い人だった
らナオミは親切にしていたよ。彼女がお断りするお客というのは、失礼な人だったり
人間的に受け入れ難いような人で、助けを必要としている人にはとても親切だったんだ。
日本人学生にも食べ物を無料で振舞っていた。ナオミはその子たちのお母さんのよう
な存在だったんだろうね。


カフェ閉店時の集合写真、撮影裏話

23_MG_3684 (1)

D:Naomi's Caféが閉店する時に、みんなで集合写真を撮ろうということになった
んだ。カフェの前にはパーキングメーターがあって、車が停まっていては良い写真が
撮れない。だからカフェが閉店になった土曜日の夜に、コンピューターで赤と白の駐
車禁止の貼紙を作ったんだ。文面は“NO PARKING   by Order of
City Committee”
(市の委員会の命により、駐車禁止)。 Committee(委員会)
っていうのは、
僕とノームのことなんだけれどね(笑)。4~5枚作って、店の前の
パーキングメー
ターにつけておいたんだよ。日曜日の朝、みんなが集まった時には
車が一台もなかっ
た!実は僕らのおかげなんだよ。(笑)
 

L:あれは市のオフィシャルなものとそっくりだったわよね。
 

D:市のものは、普通“City Council”(市議会)と書かれているんだけれど、
“City Committee”にみんな騙されたんだよね(笑)。そういうわけで、店の前は
きれいに空いていたんだ。僕のいとこに手伝ってもらって、向かいのオフィスの所に
カメラを置いて、いとこにシャッターを押してもらった。写真は、あとで焼き増しを
して常連のみんなに1枚ずつ配った。あの写真は、こんな風にして撮ったんだよね。


Naomi’s Caféは僕らみんなにとって、特別で大切な場所だったんだ。


Naomi Shimizu 3 (1)
閉店時にカフェの仲間との写真。ドンさんが呼びかけて、ドンさんが撮影した。
23_MG_3773 (1)
2015年に同じ場所で撮影したもの。カフェの仲間とともに。