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スクールボード(教育委員会)主催の“清水なおみ・クッキングクラス”
の開催中、7年に渡り全部のコースに参加。料理の師としてだけでなく、
人生の師としてまたカナダのお母さんとしてなおみ先生を敬愛する。
現在、ノースバンクーバーでドッグトレーナーとして活躍。


クッキングクラスでは、先生がいちばん元気!


私は大学生の時にカナダ人の夫と出会って、卒業後すぐに一緒にカナダに来たんです。
それまでずっと親と一緒に住んでいたので、料理がまったくできなかったんですよ。
(笑) 料理の本を見て、炒めるとか茹でるとか書いてあっても、いったいどの程度?
と、まったくわかりませんでした。

スクールボードのなおみ先生のクッキングクラスのお知らせを見て「これはもう日本
人の先生に頼るしかない!」と思い、申し込みました。1997年だったと思います。

場所は、バンクーバー・ダウンタウンの端にあるキングジョージ・ハイスクール。
学校が終わった後の教室で、他にもスク―ルボード主催のいろいろなクラスをやっ
ていました。なおみ先生のクラスは日本語での料理クラスで、夜の7時から9時ま
で。参加者は毎回10~15人、多くて20名くらいでしたね。春、秋、冬にそれぞれ
料理(食事用メニュー)のクラスが4回、ベーキング(お菓子)のクラスが4回あ
りましたが、私は7年間、全シーズンの料理とベーキングの全てのクラスに通い続
けました(笑)。今でも、全部のレシピをとってあります。


教室は家庭科室みたいなところで、コンロや流しがあり、まず先生が作って見せ
てくれてからグループに分かれてそれぞれで作ってみるという感じでした。若い
女性が多かったですね。学生、ワーホリ、私のように結婚したばかりの人やこれ
から結婚する人。ここでたくさんのお友達ができました。

お米をといだこともないような人も来ていて、いつまでたってもお米をとぎ続け
ているので「どうしたの?」と見に行ったら、お米を洗いすぎてもう粉々になっ
ていた…なんていうこともありました。(笑) 私たち、そういうレベルだった
んですよ。みんながそうだったので、恥ずかしいと思うこともなく集まれたのだ
と思います。先生は、「あらあら!」なんて言いながら、お母さんみたいに忍耐
強く指導してくださったんです。

あの頃、先生は60代だったと思いますが、若い人の中でいちばん元気で、いちば
んよく動いていたのがなおみ先生でした。私の方が疲れて座っていたくらいです。
(笑)「すごいなあ!こんなパワフルな生き生きとした60代になりたい!」と思
いました。

山のようなおみやげ付きのクラス

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クラスで作ったものを試食するのですが、その他に先生が毎回大きな箱にたくさ
んのおみやげを作って持ってきてくれるんです。シュークリーム、レーズンブレ
ッド、パイなど、あれもこれもという感じで。夫の分のおみやげまで準備してく
ださって、クラスで作ったものよりもお持ち帰り分の方が多かったくらいです。
(笑)毎シーズンの8回のクラスが終わると、夫が先生にお礼の花束をプレゼント
していました。

授業料は払っていたけれど、それ以上にいただいていましたよね。「みんなの喜
ぶ顔が見られれば、それで良いのよ」、「タッパー(持ち帰り用)を忘れちゃダ
メよ」、「来週は何を食べたい?」なんて、いつもおっしゃっていました。

みんな、ご飯を食べに来るとか、先生に会いに来るという感じだったんじゃない
でしょうか。若い子は、クラスが終わると先生が車で家まで送っていましたよ。
本当にお母さんみたいでした。

クラスの前には、先生はすごい量の荷物を、台車でひとりで何度も往復して駐車
場の車からクラスルームに運んでいたんです。申し訳なくて、早めに行ってクラ
スの準備や、クラス後の片付けのお手伝いしていました。4回のコースが終わると、
コース参加の証明書をオフィスにもらいに行ってきてね、と頼まれましたが、そ
の時にもオフィスの人たちにシュークリームやベーキング品などを届けていまし
た。お掃除の人にまで。皆さん、楽しみにしていましたよ。

忘れられないなおみ先生の言葉


先生はクラス中にも、移民した時の話とか結婚した時の話とか、たくさん苦労を
されたに違いないのに、いつでもポジテイブに人生を語ってくれました。結婚した
ばかり、移民したばかりで「どうしよう…」という状態の私でしたが、いつも笑
顔で楽しそうななおみ先生のポジテイブパワーに励まされて、「こんな風になりた
い!」と思いました。

結婚してすぐの頃、カナダの暮らしに馴染めず、いつも日本に帰りたいと思って
いました。何かうまくいかないとカナダのせいにして、「日本だったら…」と思
っていたんです。まるで牢獄に囚われているような気持ちさえしていました。
そんな時、なおみ先生が笑いながら「大丈夫よ!住めばどこでも都だからね」と
言ってくださって。「ああそうか、文句ばっかり言っていないで、自分でバンクー
バーを都にしていかなければならないんだ!自分もここで地に足をつけてやって
いこう!」と思いました。忘れられない先生の言葉です。

なおみ先生は、常にポジテイブ。何があってもネガテイブにとらない人です。そし
てパワフル!「どこからそんな力が湧いてくるの?」と思うくらいです。きっと
“人を喜ばせたい”という気持ちから出てくる力なのでしょう。

そして「ある物はすべて惜しみなく与える人」ですよね。普通の人は、与えていて
も「なぜ自分ばっかり…」と思ってしまいがちです。先生にはそういうリミットが
ないんですよ。線を引くことなく誰でも受け入れていく、そういう懐の深さがある
んです。出し惜しみすることも決してない。与えて、与えて、という人なんです。
嫌なことがあっても、何があってもそれを貫いていく。自分を守ったりしない。い
つも変わらず、信念を曲げないからすごいんです。そして、まったく裏表がない人で
す。少し裏を作った方が良いんじゃないかな、と思うくらいに。

大学を卒業してすぐの若い頃に清水なおみ先生に出会えて、「正しく生きていたら、
必ず良いことがある」というお手本を見せていただいたと思います。

TV 11 (1)
日系テレビ放送の料理番組もアシスタントとして出演